幸せは彼方にあると聞き、求めて行ったが、むなしく泣いて帰った。それでもなお遠くに幸せはある、と人は言う。そういう嘆きだが、それだけなのか。幸せは彼方にあるのではなく、人が気づこうが気づくまいが、実は日々の暮らしに、何げなく添うておるのやないかな。母も自分にそう言い聞かせていたのではないか。幸せは身近なところに、それを感じられる人の胸の中に。これは、本当の幸せをつかまえなかった者の諦観なのだろうか。そうではない、と私は思っている。当時私は、自分が何のためにこの日々を生きているのか、途方に暮れていた。その日そ
- 作者: 中坊公平
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2002/02/25
- メディア: 単行本
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